最近、ちょっと騒がしいのが「渋谷区で学校用に調達したパソコンが「1台27万円」もしていた!」というニュース。このニュースをきっかけに「学校のパソコンはChromebookでいいでしょ」という意見もも多くみられようになりました。
では本当に「Windowsでは要求にあわないのか?」「Chromebookなら大丈夫なのか?」気になるところですよね。
なので、実際にGIGAスクール構想の仕様書を確認してみました。そのうえで「GIGAスクール構想の要求」にあうパソコンをピックアップしています。

この記事のポイント
- GIGAスクール構想とは?
- GIGAスクール構想パソコンの対象OS
- GIGAスクール構想パソコンの要求スペック
- GIGAスクール構想パソコンで利用を想定している機能
- まとめ ChromebookはGIGAスクールの本命だ
GIGAスクール構想にあうパソコンとは?
それでは、具体的にみていきましょう。そもそもGIGAスクールとは何なのでしょうか?
GIGAスクール構想とは?
児童生徒向けの1人1台端末とする、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する政策です。いわば1人1台端末環境を学校の「スタンダード」にしていこうというもの。令和元年の補正予算案で閣議決定、2020年から具体的に動き出しました。
しっかり国でお金をサポートしていくので各自治体は1人1台配置できるようにしていきましょうと構想です。
政府の通達
文部科学大臣からのメッセージ(GIGAスクール構想の実現について)
https://www.mext.go.jp/content/20191225-mxt_syoto01_000003278_03.pdf
また、具体的な支援方針としては以下のように定められています。
はてな
- 児童生徒1人1台コンピュータを実現(1台当たり4.5万円を補助。令和5年度までに、小中全学年で達成)
- 高速大容量の通信ネットワーク(令和2年度までに、全ての小・中・高校・特別支援学校等で校内ネットワークを完備 (1/2補助) )
- 全国の自治体や学校が、より容易に、より効率的・効果的な調達ができるよう支援
ポイントは1台あたり4.5万円までは補助、ネットワーク費用は別で1/2まで補助する、というところですね。
あくまでPC購入にかかるイニシャル費用のみが対象で、通信費、保守費は対象でないことがわかります。
この中で最近議論となっているのが「4.5万円で調達できるパソコンって何があるんだ?」という点です。
とくにWindowsで5万円ってとんでもない端末をつかまされるのでは?という疑問が強くなっています。
では、実際にどんなOS、スペックが要求されているのか?みていきましょう。
GIGAスクール構想パソコンの対象OS
対象となっているOSは「Windows」「Chromebook」「iPadOS」の3つです
MacとAndroidは選定の対象外となっています。
なぜ対象とならなかったのかは書いていませんでした。
「学習者用コンピュータの標準仕様書」とは、「新時代の学びを支える先端技術推進方
策」の考え方に基づき、学習者用コンピュータのモデル仕様を、Microsoft 社、Google 社、
Apple 社、それぞれが提供している 3 種の OS について提示したものである。
メモ
GIGAスクール構想の実現標準仕様書
https://www.mext.go.jp/content/20200117-mxt_jogai02-000003278_002.pdf
次に各OSごとのスペックをみていきます。
GIGAスクール構想パソコンの要求スペック
各OSごとに詳細に必要なスペックが規定されています。
Microsoft Windows 端末
OS | Microsoft Windows 10 Pro |
CPU | Intel Celeron同等以上 2016年8月以降に製品化され たもの |
ストレージ | 64GB 以上 |
メモリ | 4GB 以上 |
画面 | 9~14 インチ(可能であれば 11~13 インチが望まし い) |
タッチパネル | 対応 |
無線 | IEEE 802.11 a/b/g/n/ac 以上 |
LTE 通信 | LTE 通信に対応していること (本体内蔵または外付けドングルを使用) |
形状 | デタッチャブル型またはコンバーチブル型 |
キーボード | Bluetooth 接続でない日本語 JIS キーボード |
カメラ機能 | インカメラ・アウトカメラ |
音声接続端子 | マイク・ヘッドフォン端子×1 以上 |
外部接続端子 | USB3.0 以上×1以上 |
バッテリ | 8 時間以上 |
重さ | 1.5kg 未満 |
Google Chrome OS 端末
OS | Google Chrome OS |
CPU | Intel Celeron同等以上 2016年8月以降に製品化され たもの |
ストレージ | 32GB 以上 |
メモリ | 4GB 以上 |
画面 | 9~14 インチ(可能であれば 11~13 インチが望まし い) |
タッチパネル | 対応 |
無線 | IEEE 802.11 a/b/g/n/ac 以上 |
LTE 通信 | LTE 通信に対応していること (本体内蔵または外付けドングルを使用) |
キーボード | Bluetooth 接続でない日本語 JIS キーボード |
カメラ機能 | インカメラ・アウトカメラ |
音声接続端子 | マイク・ヘッドフォン端子×1 以上 |
外部接続端子 | USB3.0 以上×1以上 |
バッテリ | 8 時間以上 |
重さ | 1.5kg 未満 |
iPadOS 端末
OS | iPadOS |
ストレージ | 32GB 以上 |
画面 | 10.2~12.9 インチ |
タッチパネル | 対応 |
無線 | IEEE 802.11 a/b/g/n/ac 以上 |
LTE 通信 | LTE 通信に対応していること (本体内蔵または外付けドングルを使用) |
キーボード | Bluetooth 接続でない日本語 JIS キーボード |
カメラ機能 | インカメラ・アウトカメラ |
スタンド | 利用時に端末を自立させるためのスタンドを端末台 数分用意すること(キーボードがスタンドになる場合 は別途準備する必要はない) |
音声接続端子 | マイク・ヘッドフォン端子×1 以上(マイク・ヘッド フォン端子がコネクタと共用になっている場合は分 配アダプタで対応) |
外部接続端子 | Lightning コネクタ又は、USB Type-C コネクタ×1 以上 |
重さ | 1.5kg 未満 |
補足事項
・キーボードについては、日本語キーボードではなく US キーボードにした場合、
より安価に調達できる可能性がある。児童生徒にキーボード入力を指導する際の
児童生徒・教師の情報活用能力や負担感を鑑みて US キーボードに変更しても良
い。
・キーボードについて「Bluetooth 接続ではない」としているのは、複数端末が教
室内でキーボードを Bluetooth で接続をした場合に、ペアリングが解除された
り、混線したりすることを避けるためである。具体的な接続方法としては USB
接続や、Smart Connector による接続、元々キーボードを取り外さないノート
型
・コンパーチブル型の端末を導入するといった方法がある。
・家庭学習や校外学習での通信方法を検討した結果、LTE 通信機能について、不要
であれば削除しても構わない(削除することでより安価な端末を整備できる可能
性がある。)。
以上が要求されているスペックです。
Windowsに関しては要件を満たせるパソコンというのはかなり限られると感じました。デタッチャブルかコンパ−チブル、かつBluetoothではないキーボードというだけで対象が絞られますよね。
逆にChromebookに関しては選択肢が広いです。2017年以降に文教向けに出たモデルはGIGAスクール仕様に沿って作ったのか?と思えるほど(笑)。要求に合うモデルは一番多いでしょう。
iPadに関しては「iPadAir」しかありません。要求仕様がそのまま「iPadAir」となっている状態でした(笑)
GIGAスクール構想パソコンで利用を想定している機能
GIGAスクール構想で使う用途は以下が規定されています。
利用を想定している機能
- ワープロソフト
- 表計算ソフト
- プレゼンテーションソフト
- 写真・動画撮影ソフト
- QR コード読み込み
- 動画編集ソフト
- 地図作成ソフト
- ファイル共有機能
- アンケー ト機能
- 電子メール
- プログラミング教材
- インターネットブラウザ
このように並べてみるとほとんどがブラウザで対応できるものとなっているのがわかります。
唯一動画編集ができないくらいでしょうか。ただ動画編集を対象とするのはいささか疑問です。
要求仕様書には「児童生徒が撮影した映像の中に解説を入れる、撮影した写真や動画を編集する、アニメーション作品を作るといった場面が想定される。」と書いてありますが4.5万円のパソコンでできるとは思えません。そもそも45分の授業でできる動画編集って何?となってしまいますね。
動画編集に関してははどのような考えで入れたのか?質問してみたいところです。
GIGAスクール構想にあうパソコン
以上を踏まえてGIGAスクール構想にあうパソコンはなにがあるのか?各OS別にピックアップしてみました。
Windows
Acer 「TMB311R-31-A14P」
AcerのGIGAスクールモデルをピックアップしてみました。実用性の面で結構文句がいわれていますが、よく頑張っていると思います。4.5万円でできるかぎりのものを作ったという感じ。逆によくGIGAスクール構想につきあってくれたなあと感じます。Acerの懐の深さを感じられる端末ですね。実用的かどうかは別としてですが。
Business DN'A|製品情報|TMB311R-31-A14P(GIGAスクール構想向け)
https://www.biz-dna.jp/products/notebook/tmb311r-31-a14p.html
Chromebook
ASUS Chromebook Flip C214MA(C214MA-BW0028)
スペック
- CPU:Celeron® N4000 プロセッサー
- メモリ:4GB
- ストレージ:32GB
- 重さ:1.29kg
- ディスプレイ:11.6型(1366×768)
ポイント
- MILスペックに準拠した堅牢性の高さ
- 本体内蔵型のEMRペンを搭載
- 前モデルから軽量化(1.4kg→1.2kg)
ひとつ代表で上げましたが、Chromebookは対象モデルはいろいろあります。選択肢は一番豊富。ASUS、Acer、Lenovo、Dellからでている11.6インチパソコンはGIGAスクールの要求スペックに見合ったものとなっています。教育向けに強いChromebookだけありますね。
iPad
iPadAir
もう、コレは「iPadAir」狙い撃ちですね。10.2インチでBluetoothでないキーボードなモデルというとコレしか有りません。問題は価格。定価なら70,000円超えです。法人用はまた違うのでしょうか。
iPad Air - Apple(日本)
https://www.apple.com/jp/ipad-air/
まとめ ChromebookはGIGAスクールの本命だ
以上、「GIGAスクール構想」の要求にあうパソコンについてみてきました。
要求スペックと使いみち、対象となるモデルの数、実用性を考慮してみて改めて「Chromebookが本命」と感じました。
Chromebookは断トツに選択肢が多いです。Windowsもこれから増えてくるのでしょうけど、もともとChromebookはGIGAスクール仕様が標準状態です。
価格もChromebookが強い。定価ベースで40,000円台、大口なら30,000円以下は当たり前の世界です。WindowsやiPadより調達のハードルが低いのは間違いありません。
ネットワークへの負荷の面でも魅力的です。OSの更新でもChromebookなら1台100MBレベル。Windowsの数分の1以下。運用面からもChromebookが適当といえるでしょう。
GIGAスクール構想のもとでのパソコン選定は始まったばかり。どのようにパソコンが採用されていくのか?引き続きウオッチしていきたいと思います。
GIGAスクールについて参考になるリンク
・GIGAスクール構想の実現について:文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm
・1台27万円? 小中学校に「PCを1人1台」で膨れ上がる予算|NEWSポストセブン
https://www.news-postseven.com/archives/20200128_1533388.html0・
・1人1台GIGAスクール構想対応 教育現場での端末活用の課題を解決「Chromebookオールインワンパッケージ」を発売|三谷商事株式会社のプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000053575.html